「ゴキブリの作りかたの作りかた2」

 

某月某日、新宿ゴールデン街 「銀河系」 にて

演出の伊藤猛(48)、脚色の今岡信治(44)が、作戦会議。

カウンターの中に女優の伊藤清美(51)がいる。

 

清美 「あたし、このお芝居、もうやめたい」

猛   「そんな事言わないでよ」

清美 「ダメ、自信ない」  

今岡 「大丈夫っすよ」

清美 「(ふくれて)大丈夫じゃないもん」

猛   「清美ちゃんいないと、成立しないじゃん」

清美 「(頑な)・・・」

猛   「頼むよ、頑張ってよ」

今岡 「そうっすよ、頑張ってくださいよ」

清美 「(突然)おしっこ」

 

清美、おしっこに行ってしまう。

猛と今岡、顔を寄せ、相談。

 

猛   「どうしよう」

今岡 「困りましたね」

猛   「清美ちゃん、言い出したら聞かないからなあ」

 

ドアが開き、内田栄一(享年64)が、入ってくる。

 

内田 「よお」

猛   「どうも、ごぶさたしてます」

内田 「うん」

 

内田、座ると、「ゴキブリの作りかた2010」のチラシを手に取る。

 

 

内田 「これ、またやるの?」

猛   「はい、是非やらさせてもらいたいと思って・・・挨拶とか行かなくてすいませんでした」

内田 「いいよ、勝手に遊んでよ・・・(チラシを見て)失敗作の美女、清美ちゃんがやるの?」

猛   「はい」 

内田 「清美ちゃんいくつだっけ?」

今岡 「51だと思いますけど」

内田 「そうか・・・どんどん俺に近づいていくなあ」

 

清美、トイレから出てくる。

 

清美 「内田さんだ!久しぶり」

内田 「うん」

清美 「何飲みますか?」

内田 「コカコーラ」

清美 「はーい」

 

清美、コカコーラを用意。

 

内田 「清美ちゃん、失敗作の美女やるの?」

清美 「だったんだけど・・・もうやめようと思ってるの」

内田 「何で?」

清美 「だって、稽古大変なんだもん」 

猛   「内田さん、何とか言ってやって下さいよ」

内田 「清美ちゃん・・・ボクはね、ガラクタやはみ出し者や、日常の中でどうしようもない

     ”底の破れた人間” をコシタンタンとねらいながら、隙あればその中に入り込み、

     ボクのペースに巻き込んで、いとも簡単に ”歴史作り” を始めることを続けてきた。

     一見、立派すぎたり ”完結” したものは相手にしない。それだけで権威あふれたよ

     うなゴーマンなものは相手にしない。『ゴキブリに立派なものは不要・・・』

     ひたすら世界のガラクタ化につとめ、ガラクタになったら、そこに飛び込んで『ツバつけ

     た!』と言ってあばれる・・・そして、もしかして ”みなさん” が拍手してくれたら、一

     目散に逃げ出してまた別の場所をガラクタ化するように努力する。『ガラクタ万歳!』

     お父さんもお母さんもオジイちゃんもオバアちゃんも、オマワリさんも隣のニイちゃんも

     お二階のオネエちゃんも、みんなガラクタになっちまえ!・・・とそういうわけだから、

     ヨロシク頼むよ!清美ちゃん」

清美 「分かった!あたし頑張る!」

 

猛、今岡、ホッとして

 

内田 「また、来るよ」

 

内田、立ち上がる。

 

内田 「舞台、見に行くわ、いつものプランBだろ」

猛   「是非」

今岡 「是非」

内田 「(ニヤッと笑って)ナンパしに行くわ」

 

内田、消える。

 

今岡 「カッコイイっすね、内田さん」

猛   「ああ」

清美 「あたし、頑張る、でたらめバカのくそったれ!」